[ネタバレあり] 3000万語の格差 : 赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者の話しかけ

[ネタバレあり] 3000万語の格差 : 赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者の話しかけ

2019年4月17日 Items 0

Dana Suskind,”Thirty Million Words: Building a Child’s Brain”の邦訳。いまさら本 (注1) シリーズ。 ★★★★☆ (注2)

デジタル絵本のTakao Watanabeさんからご紹介いただいた本。
米国の小児科医が、3歳までの言語コミュニケーションがいかに重要かについて書いたもの。

一般の人に読みやすいように注意して書かれているが、学術的なテイストは若干強めで、コンビニで売っているような自己啓発本ばりに簡単に読めるわけではないかもしれない。しかし活字アレルギーの私ですら一日で読めたので、平均よりはずっと簡単な本と言っていいです。

以下、割と読んでから時間が経っているので、間違いを含んでいる可能性もあります。ご了承を。

冒頭にも書いたがメッセージは非常に明確。3歳までの言語環境が決定的に重要だということ。
脳は3歳までに9割成長し、その間の脳の知的な成長が、後の人生において覆しがたい大きな違いとなって現れてくるということ。それ以降の教育努力は、すでに差がついてしまっているところをできるだけ埋め合わせるに近い活動になってしまうらしい。

その非常に重要な初期の3年の間に脳にとって最も大事な「栄養」は、言語にまつわる三つの T(tune in, talk more, take turn)で表わされる。Tune inとは子どもに注意を向けて、合わせてあげること。Talk moreはたくさん話しかけること、Take turnは相互に言葉を交換すること。最初のTune inが一番忘れがちなところ。子どもをよく観察して、状況に合わせた対応をすることが重要とのこと。

そのメッセージを軸に、子どもとの接し方に関する個別テーマ(STEM教育、褒め方、男女差、バイリンガルの可否、デジタル機器とのかかわりなど)や、社会的に解決する方法の提案など、話を広げている。私のブログでも触れたLENAについても若干語られている。

全体を通して客観性が高く、どんな学者が提案した概念か、などもしっかり述べられているので、一応学者の端くれの私としては好感度は高かった。後段の別著者による解説部分によれば、日本国内ではあまり知られていない研究も多いという意味でも有意義だそうである。

ただ、メッセージ性というか、声の大きさというか、感情に訴えるプレゼンテーションという意味では少し前に読んだ 松村 亜里 「世界に通用する子どもの育て方」のほうに軍配が上がる。同じ内容を述べているわけではないので単純な比較はできないが、きっと「世界~」のほうが売れる本なんだろうなあという気はした。

本文に関してはそんな感想だが、高山静子氏による20ページにわたる「解説」が予想外に面白かった。この部分は本文の内容をおさえつつも、持論を交えながら日本ではどうなのかということや具体的な接し方について詳細に述べられていて、より簡潔かつ実践的である。この部分が本全体の価値を数割高めているように思われるので、もしこの本を手に取ることがあったら、この部分にもぜひお目通しを。

注1 「今さら本」とは、子どもがみんな小学生になってしまった私にとって、現実の育児に役立てることができない本、という意味で、本の価値とは無関係です。

注2 ★の数は私の個人的な環境や学習段階、主観に基づくものなので全く信用に足りません。気になる方はAmazonレビューを参考にしてください。